薬剤科
当院は、1977年4月に高齢者の理想郷を目指して設立以来、地域の高齢者医療・福祉に取り組んでいます。高齢者医療には多職種からなるチーム医療が不可欠です。我々薬剤師は、薬の専門家として、チーム医療の一員として、高齢の患者さんひとりひとりに寄り添い、個々の特性に応じた薬物療法の提供に努めています。薬剤師の本来の役割は、患者さんに安心して服薬してもらうことで治療効果を高め、副作用はないか、指示どおりの服薬が可能であるか、患者さんの服薬能力を評価し、さらには、服薬後の経過を確認しながら次回の薬物療法のサイクルを適正化することにあります。医師、看護師、管理栄養士、リハビリテーションスタッフ、介護福祉士等と共に、患者さんのために何ができるかを常に念頭に置いて、薬物療法の適正化に取り組んでいます。
スタッフ紹介
チーム医療の実践
薬剤科のミッション
薬剤科の業務について
薬剤科の組織
2020年4月現在の組織図は下記の通りです。医療情報システム部門、医薬品安全性情報管理部門、調剤・製剤部門、臨床薬学部門から成り立っています。これらは、組織としての役割分担を示すものであり1部のみ習熟するものではありません。中小病院では薬剤師全員があらゆる業務に習熟しておく必要があります。
入院調剤・外来調剤
2006年(H18)からオーダリングシステム、全自動錠剤分割分包機を導入、2018年(H30)からフル電子カルテを導入し、効率的な薬剤業務に取り組んでいます。調剤担当者は医師がオーダした処方箋に基づき、錠剤・カプセル剤・散剤・水剤・外用剤などの調剤を行います。それぞれの薬剤の特性を理解した上で、個々の患者にとって最適な調剤を行います。薬剤によっては、腎機能や肝機能に応じて減量を検討する必要もあり検査値をもとに適正な投与量について情報提供しています。調剤室においても、電子カルテから患者さんの検査結果を確認し、適切な量が処方されているか、用法が適切かどうか等を確認した後に調剤します。
鑑査は、ダブルチェック制を取っており、調剤担当者とは別の薬剤師が行います。薬の投与量・使用方法・併用禁忌などを確認し、処方箋に疑問があれば医師に疑義照会をした後に処方の適正化と正確な調剤を実践しています。2019年度の処方変更率実績は87%でした。
1989年から全病棟に注射処方箋を導入、2006年(H18)からオーダリングシステム、2018年(H30)フル電子カルテ導入しました。注射調剤担当者は医師がオーダした注射処方箋に基づき、個人毎に注射剤を1日単位でセットして病棟に払い出します。注射剤においても薬物動態や、他剤との配合などそれぞれの薬剤の特性を理解した上で、適切な投与ルートが選択されているか、投与量や投与間隔などが適正であるか確認し調剤しています。
また、高カロリー輸液はクリーンベンチで清潔に調製を行う体制を整えています。(1992年?TPNミキシング開始、2004年?クリーンベンチ導入)
患者さんに安心、安全な薬物治療を継続していただけるよう薬剤師として全力で支援しています。
製剤
製剤室では、製剤業務を行っています。消毒などの一般製剤や、必要に応じて特殊製剤を作製していますが、必要に応じて製剤の安全性等は倫理委員会にて審査、承認を経て製剤します。
医師の要請による特殊製剤は、耳鼻科のMRSA感染症、慢性難治性耳漏に使用するブロー氏液、耳垢水、鼻出血の止血に用いる硝酸銀液などがあります。薬剤師業務や臨床上のニーズも変化し、製剤業務は減少していますが、薬剤師としての特性を臨床における必要性を踏まえた製剤業務は継続し、可能な限り医師の要請に対応しています。
病棟薬剤業務・薬剤管理指導業務
以下のような業務を実践し、「医師、看護師等と協働して行う薬物治療業務」の拡大を進めています。
・鳴門山上病院の全病棟及び介護医療院・介護老人保健施設等の関連施設に担当薬剤師を配置し、医薬品の適正使用に係る業務を行っています。
・ 紹介患者さんの病歴、薬歴、検査値等の情報を入院前から入手し、入院検討会議に必要な情報を提供し、薬物療法の継続を支援します。また、入院当日には、実際に持参薬された薬剤の確認およびご本人やご家族から情報を収集し、入院時の処方支援情報を主治医へ提供します。主治医から持参薬の継続あるいは中止の指示を受けて、持参薬指示せんを作成、一包化等の再調製を行います。変更指示があれば、患者さんに変更の内容について説明します。
・ 患者さんの処方薬については、カルテ等の情報に基づき、適切であるか再度の確認、鑑査を行います。
・持参薬や他科の処方薬と重複や相互禁忌がないか確認します。
・患者さんの腎機能・肝機能の低下等に合わせた最適な薬物治療の実施を医師に提案します。
・ 服薬困難のある患者さんには、運動機能、認知機能、嚥下機能などの総合的な評価を行い、一包化調剤や剤形変更、簡易懸濁法の導入などの服薬支援を行います。
・患者さんのベッドサイドで服用薬の作用や副作用を説明します。
・ハイリスク薬(抗がん剤、糖尿病薬、血液凝固阻止剤等)について薬学的管理を行います。
・ 抗MRSA薬開始など腎機能により容量調整の必要な薬物については腎機能に基づく投与計画を提案します。
・ 退院後も薬剤が適切に使用されるよう患者さん、ご家族等に説明します。
・ 退院時サマリーを作成し、退院後に支援する医療機関等に薬物療法にかかる情報提供を行います。
・病棟定数配置薬、カート等の医薬品の使用状況、品質等は定期的に管理します。
・病棟スタッフへ医薬品及び使用上の留意点、患者観察のポイントなど情報提供を行うとともに、患者情報を共有します。
医薬品情報管理(DI業務)
薬物治療を行うには、医薬品の適正使用に必要な情報が不可欠です。 採用医薬品ごとに添付文書、インタビューフォーム、配合変化表、医療用医薬品製品情報概要や文献集などの資料を収集し、必要時に情報提供しています。
収集した情報は常に最新のものにするため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品医療機器情報提供ウェブサイトより入手、医薬品安全管理委員会を毎週開催し、迅速な情報提供に努めています。
特に、緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)による添付文書の改定など安全性に関わる医薬品情報は特に重要であることから、患者を特定した情報として主治医ごとに注意喚起します。迅速なモニタリングが必要な場合は、一定期間の後にモニタリング実施の有無について確認し、医薬品安全管理委員会において報告、医師、看護師、薬剤師ともに情報共有し安全管理に努めています。
患者さんやスタッフ、地域の医療機関、薬局からの問い合わせに対応するほか、採用医薬品リストの作成、配布、各種資料集作成、薬事委員会での新規採用、中止等の審議、審議結果の案内など、多岐にわたるきめ細かな医薬品情報管理を実践しています。
チーム医療について
委員会活動
当院では、下記に示すように医療安全部門、医療サービス部門など32の常設委員会を編成しており、薬剤師は20の委員会の一員としてチーム医療に参画しています。
薬剤科のあゆみ
1977年 |
40床にて開院 |
1979年 | 280床に増床 |
1988年 | 介護老人保険施設(定員64)開設 |
1989年 | 注射処方箋 全病棟にて完全実施 |
1991年 | 感染防止委員会に参画 |
1992年 | TPN混注業務開始 |
1994年 | 薬剤管理指導業務開始 |
1995年 | ケアカンファレンス参画、皮膚科褥瘡回診同行開始 医薬品適正使用研究(H2拮抗剤) |
1996年 | 薬剤情報提供業務開始 全病棟カンファレンス参加 |
1997年 | 医薬品適正使用研究(VCM) |
1998年 | 医薬品適正使用研究(服薬困難への介入) 経管栄養投与時のチューブを介した与薬に簡易懸濁法導入 |
1999年 | 高齢者のADLと薬剤の影響調査研究 医薬品適正使用研究(高齢者の抗菌薬適正使用) |
2000年 | 特殊感染症薬物療法研究(疥癬) 調査研究協力(PEM) 高齢者薬物療法調査研究協力 (糖尿病) 高齢者薬物療法調査研究協力 (高齢者虚血性心疾患) |
2001年 | 疥癬治療薬剤(ペルメトリン)使用調査研究 |
2003年 | 簡易懸濁法における配合変化研究 |
2004年 | 院内製剤 ブロー氏液調製と臨床治験 |
2006年 | 頸部聴診法による服薬能力の評価と服薬支援 注射調剤室改修・クリーンベンチ採用 オーダリングシステム稼働開始 散薬調剤監査システム導入 |
2007年 | 全病棟にて無菌調整実施 |
2011年 | MSWとの協働で入院相談時から処方支援を開始 プロトコールに基づく処方支援始動 |
2012年 | 病棟配置薬剤師加算届出・薬剤師によるオーダリング始動 栄養サポートチーム加算 |
2014年 | 特別養護老人ホーム開設 病院規模200床へ変更 ポリファーマシー対策始動 入院時持参薬プロトコール始動 高齢者の適正な腎機能評価調査研究(Ⅰ期) |
2016年 | 院外処方箋発行に際して 保険薬局とのプロトコール作成 高齢者の適正な腎機能評価調査研究(Ⅱ期) |
2018年 | 新病院建設(総病床数 118床)介護医療院創設(定員32名) 電子カルテシステム導入 |
2019年 | 居宅療養管理指導届出 ポリファーマシー対策強化(オーダリング実施時に警告表示開始) |
2020年 | 病院規模変更(総病床数 90床)介護医療院増床(定員60名) |
2019年 | トピックス 慢性期comの取材を受けました。 URL https//manseiki.com |